外商になりきる父

祖父は時々、家族を全くの他人と勘違いしてしまう事があります。

一番の被害者は父。長期の出張から帰ると確実に間違えられます。しかし否定しても祖父は理解できないので、その人になりきって会話を進める事にしているそうです。

 

ある日実家に帰ると、テーブルの上には私が実家に貯蔵しておいた高級酒コレクション。それをはさんで父と祖父が何やら話しています。

 

「旦那様、こちらの竹鶴25年は将来価格が高騰する事間違いなしでございますが」

『うーんいいねぇ』

「こちらのロイヤルサルート38年も間違いのないお味です、箱にもこだわっておりまして」

『洋酒はちょっとなぁ〜』

「でしたら是非こちらの竹鶴25年を」

『そうだなぁ〜』

 

この日の父は酒屋の外商さんでした。

5万円で購入されてしまった私の竹鶴25年。

いい酒を買えてご満悦の祖父。

クスクス笑っている家族に、やりきった感を出している父。

 

開封されたらどうしようと気がきではありませんでしたが、祖父は贈答品用に買ったみたいで一安心。

 

祖父が寝たのち、竹鶴は私のコレクション棚に、5万円は祖父の財布に無事戻されました。

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